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しつけの仕方

「しつけ方」とは、「育て方」

「犬と暮らす人々の動機は様々です。人と犬がパートナーとして暮らし始める時、人の社会に招かれた犬には、一緒に暮らす人や場所、食べものをはじめ、何一つ犬自身の選択はありません。あなただけが、あなたの犬を幸せにすることができるのです。

犬は私達の言葉を理解できません。それは、犬同士のコミュニケーションに言葉が用いられていない事からもわかると思います。しかし、犬には生きて行くための学習能力があります。犬は、食欲を満たし、危険から身を守るため群れで暮らします。犬が人間を同種の群れと認識するか否かは別として、私たちの生活空間に犬を招き入れるのならば、彼らを私達の家族の一員としてとらえるべきでしょう。私たちに赤ちゃんが生まれたら、トイレから食事の仕方までを赤ちゃんの発達段階に応じて教えていくように、犬にも発達段階に応じて人との暮らしに必要なルールを教えていくことが、「犬のしつけ」であると当院は考えております。


「褒めて教える」犬との暮らしの基本は、失敗を最小限に食い止める環境作りです。失敗しても、犬を叱ってはいけません。何故かというと、人が設定した環境における犬の失敗は、人の失敗であり、犬は失敗を理解しません。叱っても無駄であり、反対に人から加えられる「叱られる」行為を避けるようになり、最悪の場合、飼い主様を避ける犬になってしまいます。

犬は、物事の起こる順番を観察し、記憶して、学んで行きます。私たちが物を手にとって確かめるように、犬は口を使います。私たちの言葉を同じような方法で理解はできませんが、音として記憶していきます。名前の概念はありませんが、「ポチ」という音の前後に起こる事柄との関連を憶えて反応します。「ポチ」という音の後に食べ物など好きな事が関連すると、次からその音に喜んで反応し、体罰など嫌悪を感じる事が関連すると、その音を避けるように成ります。これは、最も大切な「名前を呼ばれたら来る犬」にしつける工程です。

もうひとつ、大切なことは、人間の赤ちゃんを育てる時のように、犬も極力叱る必要のない環境の中で育てることです。犬を迎える住居空間の環境設定からはじめ、そこで暮らし方のマナーを教えることが大切です。私たちは、犬にばかり学ぶことを強要しがちですが、犬という生き物を理解することが、快適な共同生活への最短距離なのです。

「クレート」トレーニング

犬を迎えたその日から始める最も大切な環境設定は、「クレート」の設置です。クレートとは簡単に言えば、「犬の休む場所」のことです。一般的にはスチール製のケージが用いられます。
クレートのサイズは、犬が起立出来る高さ、四肢を延ばして横たわることが出来る幅が必要です(高さ:体高+5~10㎝、奥行き:体長+5~10㎝)。また、クレートは犬が休む場所なので、設置は騒音や人の出入りが少ない部屋の角に置きましょう。クレートの上に正面は空けた状態で布等を掛け、外部の動きや物音からほんの少しの遮断をしてあげます。底には肌触りの良いクッション性のあるマットを敷いてあげましょう。

犬を初めてクレートに入れる場合、無理矢理犬をクレートに押し込むようなことはせずに、犬が自発的にクレートに入れるような設定をします。例えば、犬が喜びそうな食べ物や玩具をクレートの中に入れておき、犬がクレートに入っても最初の間は無視をして放っておきます。やがて、犬にとってクレートは宝探しの楽しい場所となった頃に、犬の目の前でおやつをクレートの中に「ハウス」と言いながら入れて、犬がクレートに入ればまたおやつをあげるということを繰り返し、クレートに入る行動を強化していきます。

「トイレ」トレーニング

子どものトイレの練習は、オマルの上に座らせて、「シー、シー」「オシッコ」などと言葉で促し排泄をしたら褒めます。この繰り返しで子どもは尿意や便意を感じたら親に知らせて、自分で便器に座るようになります。犬にトイレを教える手順もこれに似ています。

子犬は、「ご飯やお水を飲んだ後」、「寝起き」、「運動(興奮)した後」などに排泄をすることが多いので、このタイミングでトイレに連れて行き(排泄が済むまでそこから出られないように、トイレはサークルなどで囲っておきます)、「ワンツー、ワンツー」もしく「ピッピ、プップ」などとの言葉で声掛けをして排泄するまで待ちます。排泄をした後は、トイレから出してやり褒めておやつなどをあげます。これを繰り返し、排泄の場所を強化していきます。

飼い主様の就寝時や外出時などは、排泄を催すタイミングでトイレに誘導はできないので、寝床とトイレをサークルで囲った環境を用意するなど、行動の制限をすることで失敗を予防することができます。本来犬は、土などの柔らかい場所で排泄をする習性があるので、絨毯、足ふきマットやクッション、布団などの上などで排泄をしてしまいがちです。トイレトレーニングの間は、このようなものを犬がいる場所には置かないことが失敗を予防することに繋がります。

排泄を失敗してしまった場合は、叱ったり声をかけたりせず、犬をその場所から遠ざけ排泄物を片付けましょう。失敗した排泄場所やその物の処理に関しては、完全に排泄物の匂いを取り去る必要があります。犬は自分の排泄物の匂いによって排泄が誘発されるため、匂いが残っているとそこで排泄を繰り返してしまうようにもなります。排泄物を取り去った後に消臭スプレーをかけて匂いを取り去ることを忘れずにしましょう。

吠える、噛む、飛びつく、破壊する・・・・困ったものです。

これらの行動に直面した時は、その行動を叱るのではなく、何時、何処で、どういう状況でその行動がおこるのか、その行動の原因を探ります。
そして、好ましく無い行動は、決して叱ったりせずに、完全無視をしましょう。完全無視をしている状態でも安全なように、部屋の環境、特に床の上は綺麗にしておきましょう。

もう一度確認してみてください。

犬が暮らしている環境はどうですか?
・クレートトレーニングは出来ていますか?
・クレートの設置場所は適切ですか?
・トイレトレーニングは出来ていますか?
・食欲はありますか?
・運動量は足りていますか?
・生活環境(家族構成、住居環境など)に変化はありませんでしたか?

そして
愛犬の好きなもの(こと)を5つあげてみましょう。
愛犬の嫌いなもの(こと)を5つあげてみましょう

犬に何かを教える前に、愛犬のことを知ることから始めましょう!